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映画『ライ麦畑の反逆児 ひとりぼっちのサリンジャー』に感動しました。小説「ライ麦畑でつかまえて」と、作家サリンジャーの〈全体像〉が理解できました。本当に良い映画を観ました。

 2月4日(月)、4月並の暖かさということで、有楽町・日比谷に出て、〈TOHOシネマズシャンテ〉で、
ダニー・ストロング監督・脚本・製作の、

『ライ麦畑の反逆児 ひとりぼっちのサリンジャー』

(2017年・109分)を観ました。

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 上映は、日に2回上映で、3時15分を選んだ(あと一回は、18時)ので、入場前に、隣のシャンテ3階の書店に行くつもりで、やや早めに家を出ました。
 ところが、驚くなかれ ! シャンテは、全館休業でした。

 仕方ないので、前にある〈東京ミッドナイト日比谷〉の展望ロビーに行って、スマホで、《ライ麦畑でつかまえて》の〈予習〉を30分ほどしました。余談ですが、こちらのビルも、月曜日休みのレストランが幾つかありました。

 さて、近時は、《キャッチャー・イン・ザ・ライ》と言うほうが多いようですが、《ライ麦畑でつかまえて》は、もう半世紀くらい前に読んだきりで、内容をほとんど忘れていますので〈予習〉に及んだのですが、この予習が良かった。

 映画冒頭、いきなり〈ホールデン・コールフィールド〉と出て来ても、「ああ、《ライ麦畑でつかまえて》の主人公だ」と解りますし、2度ほど写る回転木馬(メリーゴーランド)も、「ああ、最後の雨のメリーゴーランドシーンに出てくる」と解ります。
 また、全編を通じて通奏低音のように、「ライ麦畑で遊んでいる子ども達が、崖から落ちそうになったときに捕まえてあげる、ライ麦のキャッチャー」という言葉が頭から離れません。

 ところで、私の、ほぼ半世紀ほど前の読書は、ほとんど、反抗期の少年の青春物語風な理解だったように思えます。
 この映画を観たら、それは違います。
 もっと、深い背景、意味があります。青春の出来事は、いわば、〈仮託〉の一つかもしれません。

(以下、下記の「続きを読む」をワン・クリックしてお読みください。)


 その映画・・・、
 まずは、登場する、コロンビア大学短編制作コースの〈恩師〉であり、〈ストーリー〉誌主宰者のウィット・バーネット(演ずるのは、ケビン・スペーシー)が実に良い。 随所で語られる小説作法、蘊蓄にも唸ってしまいます。
 「ライ麦畑でつかまえて」のアントリーニ先生を彷彿させます。
 主役、当のジェローム・デイヴィット・サリンジャー(ニコラス・ホルトが演じます)も、恩師に譲らない。
 「選集」出版で揉め、絶交状態になった後の、晩年のウィット・バーネットは、寂しい(1972年死去・サリンジャー63歳)。

 サリンジャーは・・、マクバーニー校退学、ニューヨーク大学退学、アーサイナス大学退学、小説を書いては没、書いては没・・、やがて戦場(1942-1946)に行きます。

 そこで見たのは死にゆく友人、解放された強制収容所のユダヤ人の惨状といつまでも鼻につく死臭・・、
 PTSDで精神を病み、戦場のフラッシュバックに悩みます。東洋思想(ラーマクリシュナ・ヴィヴェーカーナンダ)に触れます。

 で、1951年に「ライ麦畑でつかまえて(キャッチャー・イン・ザ・ライ)が出版されました。32歳。
 いろいろな出版人・編集者との論争。
 出版後は、いろいろな環境変化があり、悪意のファンからも付け狙われます。
 母は優しく見守りますが、父とは、〈和解〉するも、芯から理解されることは、やはり、無理でした。
・・それに、父は、最後まで、私のような「ライ麦畑でつかまえて」の読み方でした。

 34歳で、サリンジャーは、ニューハンプシャー州南西部の田舎町・コーニッシュに11万坪(東京ドーム約7.8個分)の家を買って隠棲し、外に現れることは無くなりなした。

 子どもが2人生まれたものの、1955年(36歳)に結婚した妻・クレア・ダグラス(映画では、ルーシー・ボイントンが演じます)とは、1967年(48歳)に離婚します。人里離れた土地で、孤独の子育てに絶えきれなくなったのでしょう。
 作品を書くことと家庭生活の両立が無理なのです。
 ただ、妻子(子は、長女・マーガレット・アン、長男・マシュー・ロバート)、は、以降も近所の別棟で過ごします。

・・とおおまかに、ここまでの部分を、2012年の、

ケネス・スラウェンスキー『サリンジャー 生涯91年の真実』(邦訳・晶文社刊)

の大部な伝記に従って丹念に描かれます。
 静謐な音楽も良い(ペア・マックレアリー)。

「ライ麦畑でつかまえて(キャッチャー・イン・ザ・ライ)」は、決して、ただの青春小説などでは無いことが解ってきます。

 この映画は、素晴らしい映画作品です。まさに、サリンジャーの全体像と、その中に占める「ライ麦畑でつかまえて(キャッチャー・イン・ザ・ライ)」の位置づけがよく理解できます。

 サリンジャーは、2010年に91歳で亡くなりました。
 1965年(46歳)の「ハプワース16,1924年」が最後の新作出版ですが、以降、45年間隠棲生活が続きました。
 隠棲以降も、文章は書き続けられたようです。最近、遺族がその遺作を出版することになったとの新聞記事がありましたが、量が膨大で、整理するのに数年はかかるとのことです。

 映画に感動して、まずは、D・J・サリンジャーの、中・短編集
『このサンドイッチ、マヨネーズ忘れてる /ハプワース16/ 1924年』
を読んでみようと思います。★

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Author:感動人
 芸術全般を愛する団塊世代です。
 「引退後」、たっぷり時間をかけて、いろいろな芸術を初心にかえって学び、横断的に、楽しんでいきたいと思います。もうひとつ、心身共に健康に「年をとっていく」ための、生活のマネジメントも「同時進行」でお伝えします。
 のんびりと過ごしたいと考えています。お寄せいただくコメントなども、論争などは避けて、ゆったりしたお話をお寄せください。

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