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朝井まかて『草々不一』 ~脇に登場する女たちが、皆、出すぎず引きすぎず、ほっこりと魅力的で、夫婦愛など心にしみます。男たちの、仇討ちや留守居役の根回し活動など、武士の裏面世界も興味深く描く、力作の短編8作品です。

 いつもながら、良いですねえ、朝井まかて作品。
 朝井まかては、松井今朝子、宮部みゆき、原田マハ、青山文平などと共に、私の好きな作家の一人です。今日の本は・・、

朝井まかて 『草々不一』(講談社)

です。

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 この作品に登場する女性は、江戸の、武士の、男性の世に、出すぎず引きすぎず、しかし、みな自分を持って生きています。
 やはり、女性作家ゆえか、女性の描き方はすこぶる巧く、感動します。

 一方、男性は、皆、下級武士で、生きづらい、閉塞的な武士の世を生きています。
 この武家社会の生きづらさ、これは、青山文平作品でもよく書かれていますが、本作品は、さらに具体的に細かく書かれていて、《江戸留守居役》などについても一考に値します。

 例えば・・・、

 江戸城内・大奥の生活・・例えば、物語「一汁五菜」では、鮪(まぐろ)は、別名シビと言い、死日を連想させるから禁忌食材であるとか、毒味方法(御広敷番之頭・御用達添番、御中﨟、御年寄)なども細かく語られますし・・、

 江戸の武士社会・・例えば、いかに非役が多く、内職、賄賂が多かったかとか、早朝の「対客登城前」とか、武士は、一人歩きしない・荷物を自分で持たないとか、それに・・、
 街風俗・・例えば、「吉原の牛太郎(ぎゅうたろう)と客引きのことを言うとか・・
そう言ったことが、分かりやすく描かれています。

 作品は、皆、人間を見る目が優しく、それでいて諧謔もきいた文章で、いずれも、各章40頁前後で、時代小説の名作がある著者ならではの、起承転結、巧く纏まった短編揃いです。

 もう一つ。本書の表紙、挿絵です。著者の作品の多くと同じく、今回も、ユーモアがあり思わず吹き出してしまいます。今回の表紙と挿絵は、白浜美代子

 各章をざっと観てみましょう・・、

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歌舞伎『姫路城音菊礎石』 ~狂言改革者・並木五瓶の志を継いだような、観客を喜ばせ、新春らしく明るく、楽しい編綴。菊之助、長男・甥と共に大活躍。

 1月17日正午から、平成最後となる、国立劇場初春歌舞伎公演、恒例の尾上菊五郎一座公演を観ました。
 今回は、音羽屋家の芸「新古演劇十種」の通し狂言、

『姫路城音菊礎石』(5幕9場)
(ひめじじょう おとにきく そのいしずえ)
です。

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 尾上菊五郎所縁の「音」「菊」が名題に入って、御家騒動、妖怪ミステリー、狐の報恩譚を基本に、善悪正邪入り乱れた意外性に富んだ内容ですが、新春、初芝居らしく、狐親子などの悲劇的な要素は無くし、解りやすく、楽しい娯楽作品となっています。

 並木五瓶の「袖簿播州廻り(そでにっきばんしゅうめぐり)」(1779年安永8年初演)を元に、平成3年に国立劇場で212年ぶりに復活されたものを、今回、さらに編綴されましたが、開幕前、真っ暗にした客席から、冒頭、いきなり目が眩むほどの明るい舞台になって、遊女・花魁らの現代風、《ダンス》(!?)所作で賑やかに始まりました。ここで、もう、娯楽性が高いことがうかがわれます。
 3幕、「姫路城天守の場」では、菊之助自ら振り付けした、腰元お菊(梅枝)との長唄での所作事で魅了されます。

 それに、菊之助の、5歳の長男・寺嶋和史(かずふみ)と、6歳の甥・寺嶋眞秀(まほろ)の両音羽屋が、桃井国松役と福寿狐役で大いに受けました。和史クンの花道での見得など可愛いったらありません。
 因みに、菊之助(本名・寺島和康)の妻は、中村吉右衛門の四女・波野瓔子(ようこ)さん、眞秀クンは、菊之助の姉・寺島しのぶさんが母で、父は、フランス人アート・ディレクター・ローラン・グラシアさんです。

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 さらには、娯楽性に富んだ舞台、例えば、10人での縄跳び(!)などは、歌舞伎役者、さすが、巧いですなあ・・。

 何と言っても、
尾上菊之助【昭和52-・音羽屋・5代目】
が、弓矢太郎(実は、多治見純太郎)、主水女房お辰、小女郞狐の3役で、早変わりも見せて大活躍です。

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松井今朝子『芙蓉の干城』 ~手練れ、熟達の作品です。昭和の始めの時代と歌舞伎がたっぷり描かれた上質なミステリーです。

 あらゆるところに、重要な伏線がはってありますが、犯人を、全く予想できませんでした。今回読んだのは、〈歌舞伎バックステージ・ミステリー〉作品とうたう、

松井今朝子 『芙蓉の干城(ふようのたて)』(集英社)

です。

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 2013年7月1日の本ブログでもアップした、「壺中(こちゅう)の回廊」の〈姉妹編〉と言えましょうか。
 今度も、昭和8年頃が舞台で、狂言作者で大学講師の桜木治郎が謎を解いて行きます。
「壺中の回廊」で登場した、治郎の妻の従妹・大室澪子(みおこ)が、今度は、魅力的に描かれています。それに、(驚きました)荻野沢之丞も再び登場します。
 引き続いて存在感あるのは、築地署の警部補・笹岡です。

 物語は、桜木治郎が、5代目荻野宇源次(藤太郎)の襲名記念のために、6代目荻野沢之丞の子、故・4代目荻野宇源次(本名・高村泰男)の評伝を書くつもりが、木挽座での殺人事件(三十間堀事件、入船町事件など)に首を突っ込む様になり、これを解決していく物語です。

 殺されるのは、右翼(征西会)の大物・小見山正憲(本名・正三郎)とその〈女〉で、したたかな大坂島之内の芸妓・照世美(本名・木村ヒロ)。さらに、大道具方・杉田、小道具方・百瀬など・・。など、です
 「壺中の回廊」では、木挽座の〈鳥屋〉で蘭五郎が殺されました。今回も、座内での犯行から物語がスタートします。

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原田マハ 『常設展示室』 ~繊細で、細やかで、心が洗われるような、また、絵画・美術界を舞台装置に遣ったところが新鮮な、珠玉の短編集です。

 本年は、正月から、良い本ばかりに当たりました。
この本も、なぜか、久しぶりに心が洗われたような、ホッとした感じです。読んだのは、

原田マハ 『常設展示室』(新潮社)

です。

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 著者の、家族に焦点を当てた、このような繊細な短編集は、あまり無かったように思います。『小説新潮』発表された短編をまとめたものです。

〈家族〉、特に、年老いた親や兄妹・姉弟の鬱屈や思いやりが主に描かれ、また、美術界で著者が経験したであろう心象風景もたっぷり語られています。それに、ちょっぴり、著者のセレブ指向も。 
 この著者には珍しく、介護に関する記述が随所に現れます。
それに、やはり、舞台装置に絵画を遣ったところなどが新鮮です。特に、〈常設展示室〉は、国立西洋美術館、パリのポンピドーセンターや国立近代美術館が物語の舞台として遣われています。

最初の物語は、「群青」。
 著者の、メトロポリタン美術館勤務の経験、印象が生きた、また、障害(デスアビリティ)児を健常児と同じように接する大切さを気づかせてくれる、珠玉の短編です。

 メトロポリタン美術館に勤める主人公・オノ・ミサオ(美青。37歳)が、弱視が進む少女・パメラを抱いて、パブロ・ピカソの〈青の時代〉の作品、《盲人の食事》(1930)を見せようとするところと、その主人公の自問がクライマックスです。
 その弱視の少女は、先日、眼科待合室にいて、そこで、懸命に美術書に目を近づけて読んでいました。その描写にも心打たれます。

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 そして、美青自身も、つい先日、〈緑内障(glaucoma)〉であることを宣告されて、遠からず視力を失うことが分かったということがあります。
 美青は、視力を失うことになって落ち込んでいましたが、その少女を思い出し、さて、最近の自分は、少女のように賢明に絵画を観ようとしていただろうか・・と自問していたところでした。

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森洋子『シャボン玉の図像学』 ~新春最初の読書は、充実度満点。寓意に満ちた作品から、生活情景をストレートに描写した作品まで、多くの〈シャボン玉〉の絵画を味わい、その中から、西洋絵画解釈の方法理解が格段に進みました。

 新年早々、良い書物に邂逅し、ゆっくり精読しました。それは・・、

森洋子 『シャボン玉の図像学』(未来社)

です。

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 著者は、16世紀フランドルのピーテル・ブリューゲルや図像学の研究家、学術博士で、本書は、1986年の論文(お茶の水女子大学「藝術論考Ⅰ」)を基に、1999年初版 (5800円)された書です。

 中世の西洋画にある「寓意」(ぐうい。イメージを遣って、表面的な意味よりも深い意味を伝えるもの。アレゴリー。)への理解、「画中画」の解釈の重要性を知り、絵を観る場合に、改めて注意深く、入念に観ることを学びました。
 これは、カトリックと宗教改革、プロテスタントの違いを知ることにもなります。

 これを読むと、例えば、風俗画で、主に生活の情景を描いているフェルメール (1632-1675)の絵でさえ、画中画や「アトリビュート」(伝説上・歴史上の人物や、特定の神と関連づけられる持ち物や、その持ち主を特定する役割を果たすもの。)について詮索してしまいます。
 フェルメールに影響を与えたピーテル・デ・ホーホ (1625-1684)は、完全に、「庭でのシャボン玉遊び」(1656)の絵がありますから、フェルメールも、当時、アムステルダム中心の「ウァニタス・ブーム」も起こっている中で、全く無影響の訳はないと考えてしまうのです。
 中でも感銘を受ける例は・・、
 18世紀の作品、ルイス・ド・モニの《レース編みの老婦人とシャボン玉を吹く少年》(1742)です。

 この絵は、おそらく、1743年に他界した、その前年の、病身の作者の母がモデルで、母は、一心不乱にレース編んでいます。これは、生の終焉が近いにもかかわらずに真面目に働く、いわば「有徳の仕事」を暗示しています。
 その母の絵の、頭部空中にシャボン玉が浮かんでいます。これは、「人間の生のむなしさ」の寓意でしょう。この絵を、作者は、没する1771年まで手放さなかったとか。

 一方、後述する、日本の野口雨情の詩もそうですが、この時代は、乳児の死亡率が1/3~1/5と高く、短命な子どもの象徴として描かれた絵画もあります。

 この様に、特に、16~18世紀西欧では、美しいシャボン玉であっても「確実に終焉する。人間の命も同じ。そのことを十分心に留めて理解すること。」が大切という寓意、「生のむなしさ」の寓意がありました。

 これは、エラスムスの『格言集』(1500年・パリ)から、「人間は、泡沫なり」という、泡沫感、虚無感に影響された図像表現としてのシャボン玉です。
 花や煙の図像で表される「ウァニタス」(むなしさ)や、頭蓋骨の図像で表される「メメント・モリ」(死を想え)の虚無感にも通じます。
 また、『伝導の書』にある「空(くう)の空なるかな、すべては空しい」という根本思想にも淵源しています。これには、「空」が38回遣われています。

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新年特集:『グスタフ・クリムト』 ~世紀末を革新的な絵と行動で疾風し、多くの恋人と庶子を持ち、多くの飼猫に素描を囓られた、その人生と絵画を鳥瞰してみました。

 今春(4月23日~7月10日)、上野の「東京都美術館」で開催が予定されている、「グスタフ・クリムト」展。
 世紀転換期オーストリアの歴史的画家といわれている、クリムトについて、その絵画と人生を予習してみました。久しぶりに約1万2千字の長文です。

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 展覧会のチラシは、《ユディットⅡ》の上部が写っています。チラシをめくると、左から、早世した弟エルンストの子どもヘレーネの肖像、アッター湖畔のカンマー城Ⅲの風景画、パトロンの妻であるオイゲーニア・プリマヴェージの肖像画。さらに、頁を繰った最後には、《ベートーベン・フリーズ》もありますが、正面の壁(第2の壁)部分です。これらについて、順次、以下に説明します。

 これを書くために読んだのは、古書で買った、大判フルカラーの240頁の、

ゴッドフリート・フリードル『グスタフ・クリムトー女性の姿をした世界』(ベネディクト・タッシェン出版)

と、参考書として、

平松洋 『クリムト 官能の世界へ』(角川新書)※2018年1月刊行

です。
 前者では、西欧の読者が既知であろうところを後者では説明が入っているので、有益でした。やはり、何事も、参考書というものが必要です。
 ムンク展に行った時に持ち帰ったクリムト展のチラシと、手に入った良質な古書で、クリムトへの興味が広がりました。

 クリムトは、女性画、寓意画、風景画そして官能的な素描画で知られますが、絵の解釈は、なかなか容易ではありません。しかし、両書を読み終えると、朧気ながら感じるところが多々出てきました。

グスタフ・クリムト(1862-1918)は、
父:エルンスト・クリムト(1834-1892)【彫版師で、ボヘミア農家の出。8歳のとき両親とウイーンに移住】と、
母:アンナ・クリムト(1836-1915;旧名フィンスター)【ウイーン出身】
との間に、ウイーン中心部から約7km離れた、バウムガルテン(現ウイーン市14区)のリンツアー通り247番地に生まれました。 
 なお、弟2人、エルンストとゲオルクも下記同校で学び、彫刻師、彫金師で、クリムトの為に多くの額縁を作製しています。

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謹賀新年 本年も よろしくお願い申し上げます

謹賀新年

本年も  よろしく お願い申しあげます

 私は、干支にあたり、72歳と相成り、「先行き」の時間もやや頼りなくなって参りました。
 しかし、やはり、《凋(しぼ)める花の色なくても にほい残れるが如し》でありたいと思っています。

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 運動嫌い、孤独好きながら、家事好き、読書・美術・オペラ・歌舞伎大好き、なので、72歳を迎えても全く苦痛ではありません。これが私なりの、「老い光」というのでしょうか。
 それに、このブログを続けられる限りは《幸運・無事》だと思っています。

 今、歳とって思うのですが、退職前3年間、特別養護老人ホームの施設長(理事)を勤めたこと、さらに、退職後6年間、地域で、民生委員・児童委員を勤めたことが、老後にとって大いなる収穫でした。

ところで、年末年始の読書は、大部な次の書物です。
正月、孫や息子たちと遊び、話す合間に読んでいます。

宮地尚子 『傷を愛せるか』(大月書店)
イングリッド・ローランド、ノア・チャーニー 『「芸術」をつくった男』(柏書房)
森洋子 『シャボン玉の図像学』(未来社)
それに、
クリムトの絵画集も再読しています。

 最初の、宮地書は、暮れに「本の旅人」(角川書店)で知った本で、著者の繊細な心が伺われ、心が洗われるがごとき書です。
次の2冊は、今までの読書の流れですが、「シャボン玉・・」は、正月早々、「ウァニタス」(「人間は泡沫なり」!)と「メメントモリ」(「死を想え」!)を考える、逆に、正月だから相応しい書かもしれません。
 読んでいて、フェルメールは、アムステルダムを中心とした、《ウァニタス・ブーム》の影響を受けていなかったのか?という疑問などが起こっています。カラヴァッジョには、《リュートを弾く人》(1595-1596)などがあります。
 この議論は、後に感想をアップした時に話題にしましょう・・。
 いずれも、年初の読書としては、充実しています。
 あっ、新刊、
原田マハ 『常設展示室』(新潮社)
も積んであります。こちらは、好きな作者ゆえ、ゆっくり、読み出します。★

(写真は、銀座鳩居堂のウインドウです。)

朽木ゆり子『フェルメール全点踏破の旅』 ~新書版によくぞこれだけ盛り込んだ、と思う内容です。読了して、〈図象学〉に興味をそそられました。

 まずは雑談を・・、
 「観光なんて誰が考えたんだ。なんにも知らないバカな観光客が町をうろうろして、邪魔くさいったらありゃしない」。
 歌は、題自体が皮肉な、「サマータイム・イン・ヴェニス」。
 キャサリーン・ヘップバーン主演の映画「旅情」の冒頭に出る音楽です。
・・橋本治「観光客が嫌いだ」(『ちくま』2019年1月号2頁)にありますが、知らなかった。

 もう一つ、同号9頁には、アメリカ国家「星条旗」は、「酒飲みの歌〈天使のアナクレオンへ〉」のメロディーをアレンジして作られたもの・・とか。
 毎晩、寝る前に出版社小雑誌(PR誌)を読んでいますが、そろそろ来だした〈新年号〉に、早速、読みふけりました。

 さて、今年末は、美術の読書が多くなりました。クリムトに関する読書が終わったと思ったら、また、フェルメールに関する本が見つかり、読まずにいられませんでした。

 12月8日の本ブログで、
 植本一子『フェルメール』(ナナロク社・ブルーシーブ)
をご紹介しました。
 本年10月刊行で、約2週間(3月20日~26日、5月9日~16日)かけて、7か国・14都市、17美術館の〈フェルメール〉全作品を訪ねた写真集でした。
 ところが、2006初版ですが、版を重ねている《全踏破本》がありました。

朽木ゆり子 『フェルメール全点踏破の旅』(集英社新書ヴィジュアル版)

です。

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 こちらは、2004年12月から2005年1月に〈踏破〉したものです。
絵画は同じですから、発行年月はあまり重要ではありません。

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『ミケランジェロとヴァザーリ』 ~ミケランジェロ時代の彫刻・絵画が、その時代の法皇とともに、分かりやすく、理解出来て、このあとの読書に繋がります。

 映画「ミケランジェロ 愛と死」(アート・オン・スクリーン)を11月29日を観たときに、さかんに、同時代の1550年に刊行された、
『画家・彫刻家・建築家列伝』(部分邦訳『美術家列伝』
が引用されていて興味を持ちました。

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 これを書いたのが、ジョルジョ・ヴァザーリ(1511-1574)
です。

 たまたま、ネットで、このヴァザーリのことを書いた
イングリッド・ローランド/ノア・チャーニー『芸術をつくった男』(柏書房) 
が、2018年8月に出版されているのを見つけました。
 しかし、464頁、3,000円近い大著を買って読むのは、まだ自信がありません。

 そのときに、ヴァザーリのミケランジェロ部分をイラストで抜き出した書物が出ているのに気がつきました。それが、今日ご紹介する、

古山浩一(イラスト)・古玉かりほ(編訳) 『ミケランジェロとヴァザーリ』(芸術新聞社)

です。
 表紙は、ヴァザーリの原著を遣っています。

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 まず、役だったのが、ミケランジェロ生涯の、13人の法皇一覧表です(48-49頁)。
これがあれば、格段に理解が進みます。
 私は、これをノートに写し、システィーナ礼拝堂、ユリウス2世墓廟、最後の審判などの製作期間に棒線をひいたり、フィレンツエ共和制樹立・崩壊やダ・ビンチ、ラファエロの死を書き込みました。
 これからも類書を読んだときに、この表に、出来事を書き込むようにしたら、『芸術をつくった男』を読む自信がつきました。

 本書にある、〈フレスコ画の描き方〉、〈天井画はどうして描かれたのか〉や、〈ミケランジェロとダ・ビンチの描線の違い〉、テンペラ技法、解剖学・・、といったコラムも有用です。

 ただし、肝心のイラストは兎も角、その会話文は、読みづらく、品も無くて、あまり意味が無かったように思います。なぜ、きちんとしなかったのかな。
 そこを除いては、なかなか価値ある一冊ではあります。★

レイチェル・イザドラ 『ベンのトランペット』~ ああ、粋な〈大人〉だなあ。心を通わせる一言があります。

 絵本です。
 モノトーンで、ミケランジェロの素描のような、細密な線の描写です。

落合恵子「明るい覚悟 ⑪」(「一冊の本」所載)の中で、庭の、るこう草を見ながら、亡くなった友にあげたかったこの絵本を、「ひとりの大人として」想いながら引用された絵本です。

 レイチェル・イザドラ(著)・谷川俊太郎(訳)
『ベンのトランペット』(あかね書房)

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 アメリカ図書館協会の下部機関、児童図書館協会の1979年度コルデコット賞次席受賞作品です。
 19世紀英国のイラストレーター、ランドルフ・コールデコット(1846-1886)に由来し、年間で最も優れた作品に与えられます。

 貧しい黒人少年ベンが、毎晩、「ジグザグ・ジャズ・クラブ」から流れるジャズに合わせて、非常階段に座って、〈エアー・トランペット〉を吹いています。時に夜更けまで。
 家に帰ってからも、夢中で、家族に聴かせます。

「ばっかじゃねえか ! ペットなんかもってねえくせに。」友は、馬鹿にします。

 そんなある日、バンドメンバーが休憩した時、一人のトランペッターがベンに近づいて来て聞きます。
「ラッパは どこにあるんだい ? 」
「もってないよ。」ベンは言います。
トランペッターは、ベンの肩に腕をまわして言いました。
「クラブへこいよ。」

・・
「いっしょに やってみようじゃねえか。」

 ただこれだけ。〈粋〉な大人です。こんな風に子どもに接したいものです。
さて、子どもは、この絵本をどう感じるでしょうか。★

年賀状を書き終えました。年末の余興に、ブログ筆者を知っていただくこともあって、今年一年の、私の「日々の暮らし」、もご紹介してみます。

 年賀状を書き終えました。今年は、例年よりも、数日、早かった。
 年賀状、と言っても、もう、印刷は止め、枚数も、例年少なくして行って、今年は、15枚だけです。
 その代わり、と言ってはナンですが、一枚一枚、心を籠めて文章を練ります。書く葉書は、《銀座鳩居堂》製が主です。

 まず、いつも、12月に入ると、普段書き溜めた「読書メモ」を繰って、遣える言葉を探します。
 例えば・・、
元上司・仲人さんには、「鶏舌(けいぜつ)を一片賜りたい」とか、友人には、「久闊(きゅうかつ)を叙して語りあう」とか、「琴瑟(きんしつ)相和す」(夫婦間仲睦まじいこと)・・とか、
「鴻雁の歩(こうがんのひしくい)」(よたよた歩く)は、未だ早い、とか。「しぼめる花の色無くても、にほい残れるが如し」は、昨年遣ったなとか・・。

 来年は、私の干支(72歳になります。)なので、私の名前の由来との関係を、中国の古典からひいて書きましたが、これを書いたのは主に息子たちだけ。私史のようなものですからね。

 で、一人ひとり、一枚一枚、語るように心を籠めて書いていきます。
筆記具は、ウオーターマンの万年筆。文末には、花押の印を押します。花押を縮小して印にした特注品です。
 切手は、年賀切手。これは、妻が、書き終えた葉書を読みながら、丁寧に貼付してくれます。
今年は、珍しく、妻に、「巧い、良い文章ねえ」と始めて言われました。もう、人生の終わりが近くて良い文章が書けたのかも。

 さて、今年は、特に、一年のんびり暮らしました。
夏の避暑も、億劫になって行きませんでした。
 毎朝、起きるのは8時。お茶を飲み、新聞小説だけ読んでから、朝風呂に入ります。心筋梗塞を起こさないようにゆっくりと・・。出る時には風呂を流して、洗います。

 出て少しすると、妻が、デパ地下かスーパーに朝の買い物に出かけます。体に悪いので、妻は、少し何か食べてから出かけます。
 風呂を出た私は、少し休憩して、洗濯・洗濯干し、家中の掃除、ベッド・メーキング(冬は、虫が入らないので窓を開け放してハタキをかけます。)をします。冬でも、少し汗ばみます。

 妻が帰ってきてから、11時近くに食事。食後に必ず甘いものを食べるのは、止めれば良いと思いつつ止められません。したくないことは、あの世に行ってからしよう、と思っています。
 食後、新聞を隅々まで読み、2階の書斎で、1時頃から5時頃まで読書。
今は、グスタフ・クリムトの美術書と、METオペラの本など数冊を読んでいます。クリムトは、このブログの《新年特集》にする予定です。

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 途中で、洗濯を取り込んで畳んだり、アイロンかけをすることがあります。3時前後に、1階に下りて行って紅茶を飲みます。また、少し、甘い物を。
(たまに、運動を兼ねて、書店・古書店廻り、デパート・ホームセンター廻りをします。)
・・「筆硯塵を生ず」。

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国立劇場・歌舞伎『増補双級巴』 ~「よっ、 ご両人 ! 」。吉右衛門・菊之助、談笑の会話から、吉右衛門《葛籠(つづら)抜け》の宙乗りを経て、「南禅寺山門」パロディー。工夫された脚本で、国立劇場、今年の掉尾を飾りました。大薩摩の三味線も良かった。

 12月12日(水)正午から、永田町、国立劇場で、

国立劇場・歌舞伎『増補双級巴(ぞうほふたつどもえ) ­石川五右衛門­』

を鑑賞しました。

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 先月の国立劇場・歌舞伎は、今ひとつ、の感がありましたが、今回は、空中での「葛籠(つずら)抜け」【写真】やクライマックスの大立ち回り、間には、大薩摩三味線の演奏があるなど見所も多く、台本も練られています。
 ただ、国立劇場らしく、学究的な、と言うか理詰めな練り方で、細かいところは、事前に知識が無いと気づかずに過ぎてしまいそうです。

 例えば・・、
 五右衛門実母の《寒竹の笛》の動き(1.2幕)や、3幕で御台が吹くと剣が音を発して交わるところ、葛籠(つずら)の中に次左衛門が居たこと、久吉が雄龍丸(おりゅうまる)を、五右衛門が雌龍丸(めりゅうまる)を所持すること、太政官の御正印(みしょういん)の狙いや所持者、木屋町2階のパロディーや小柄投げ打ち、父次左衛門の方途・・などです。
 なお、五右衛門自体は、生活者、小心な恐妻家としての面が前面に出ていますので、それが面白いか、冗長か、は、好みになるでしょう。

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 今回の台本は・・、
「木下蔭狭間合戦(このしたかげはざまがっせん)」(主に、前半) や、
並木宗輔「釜淵双級巴(かまがふちふたつどもえ)」(主に、後半)、
などの石川五右衛門(?-1594)物に、創作場面が入った、三世瀬川如皐(せがわじょこう 1806-1881)が脚色し、1737年に豊竹座の人形浄瑠璃で初演されたものを、
歌舞伎で、「木下蘇我恵真砂路(このしたそがめぐみのまさごじ)」として、嘉永4(1851)年江戸中村座で初演され、以後、初代中村吉右衛門によって、大正・昭和初期に度々上演されたものに、初代市川左団次の所演本を加え、今回、当代吉右衛門が補綴し、《通し狂言》として上演したものです。

 特に、「大詰 五右衛門隠家」は、50年ぶり、「序幕 壬生村(みぶむら)」は(数分ですが)、70年ぶり、「三幕三場 木屋町二階」(やはり、数分ですが)は、90年ぶりの復活上演です。

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植本一子『フェルメール』 ~ 新刊。14都市、17美術館の〈フェルメール〉作品を踏破した写真集です。再度、《フェルメール展》に行きたくなりました。

 「上野の森美術館」で開催中の《フェルメール展》を観たあとなので、一層、本書に感じ入りました。なかなかのアイディアです。
 そして、もう一回、《フェルメール展》に行きたくなりました。
 その本は、

植本一子(うえもと いちこ 1984-)『フェルメール』(ナナロク社・ブルーシーブ)

です。

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 本書は、本年10月刊行の新刊です。
 今年、約2週間(3月20日~26日、5月9日~16日)で、
7か国・14都市、17美術館の〈フェルメール〉全作品を訪ねた写真集です(¥2,160)。
 まずは、どの絵が、どの美術館にあるか、一目で、地図と共にわかります。
 美術館や絵画、街のスナップも新鮮ですし(写真の写し方も参考になります)、素人っぽい(失礼!)感想で、却って納得します。

 同行は、本書編集のプロデューサーも兼ねる共同発行人の2人と編集デザイナーです。
一人は、美術に造詣が深く、語学も堪能のようです。

 度々出る、「写真(複製写真)で観るのと、全然、色が違う。別物の感じ。」という感想が印象に残ります。やはり、本物を観なければ駄目ですね。
 絵画のスナップ撮影写真も、著者の気になった部分を接写風にしているので、類書と異なった面白さがあります。

 著者、初日到着、3月20日のオランダの夜では、ホテルで、時差ぼけで、夜中目が覚めて、日本を立つ前にファミリーマートで買ったホットケーキを夜中に食べた、など気取らないエピソードが好感です。
(それにしても、ご主人が、1月24日に癌で亡くなっている不幸を越えての取材です。)

 各国の美術館事情も興味深い。
 どこも、絵の前に車座に座って鑑賞する小さな子ども達が必ず見られます。マウリッツハイス美術館(オランダ/デン・ハーグ)で、先生がネズミのパペットを持ってきて説明しているのも微笑ましい。
 行った英国の美術館が、皆、無料で、アイルランド・ナショナルギャラリー(ダブリン)のように無休というのもあります。
 アムステルダム国立美術館内には、自転車専用道が通り抜けているのも面白い。
 どこも、大概は、写真可で、空気が緩く、リラックスして観られる雰囲気も羨ましい。

 これを読んだら、もう一度、フェルメール展に行きたくなりました。
 最後に、先日、古書市で、貴重な、
ゴッドフリート・フリードル『グスタフ・クリムト』(ベネディクト・タッシェン出版)
を見つけて求めました。
 クリムトは、来春に展覧会が開かれますので、ゆっくり研究したいと思っています。
 来週は、歌舞伎に参ります。★

『ルーベンス展』 ~リアリズムに満ちた巨大な《バロック画》から、情愛に満ちた子どもまで、素晴らしい展覧会で、今年、私のベスト最上位です。午後は、《ムーミンSTORY~リトル・ミイの秘密~》も観て、《スナフキン》のフィギュアを買いました。

 12月5日(水)、妻と、上野の国立西洋美術館に行ってきました。
美しい銀杏の下に、ロダンの《考える人》が映えています。

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 この日鑑賞したのは(いよいよ!)、

『ルーベンス展 ーバロックの誕生ー』

です。
 今年、私の最も感動した展覧会、でした。

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 会場は、第1章 ルーベンスの世界、に始まって、2 過去の伝統、3 英雄としての聖人たちー宗教画とバロック、
4 神話の力ーヘラクレスと男性ヌード、5 神話の力ーヴィーナスと女性ヌード 6 絵筆の熱狂、7 寓意と寓意的説話、
まで約70点が展示されています。

 午前11時頃に入場しましたが、それほど混雑はしていません。

 まずは、地下ホールに下りて、最初に、アントワープ聖母大聖堂
(アントワープ市の守護聖人・聖母マリアを祀る、ネーデルランド最大の聖堂)の3枚の祭壇画、
十字架昇架の三連祭壇画》(1610-1611頃)、
十字架降架の三連祭壇画》(1611-1614頃)、
聖母被昇天》(1626頃)、
を4K映像で見せています(6分)。シアターは、椅子に座れます。

 例の、ウイーダ(マリー・ルイーズ・ド・ラメー)『フランダースの犬』に出る作品です。
 素晴らしい画質で、《降架》の女性の〈涙〉まで見えました。書物の図録では、分かりませんでした。
 因みに、出口のグッズ売り場では、3連に折りたたんだこれらの絵を売っています(500円)ので、隠れた部分、特に、裏を鑑賞するのにお薦めです。

 最初、2枚目の展示が、小さいが、《クララ・セレーナ・ルーベンスの肖像》。
1623年に12歳で死んだ第一子の愛らしい肖像です。続いて、子どもの絵《眠るふたりの子ども》(因みに、この館所蔵です。)もありますが、肖像に限らず、大きな寓意絵画でも、脇の子どもの絵が見事な写実で、どれも可愛い。
 どうか、子どもの表情を見落とさないでください。

 例の、
聖アンデレの殉教》。
(スペイン・マドリードのサンタンドレス・デ・ロス・フラメンコス王立病院礼拝堂所蔵)
はさすが、迫力があります。
 アンデレは、12使徒の一人で、ペドロ(本名は、シモンで、イエスの後継者を任せられました。殉教後の墓は、「聖ペテロ」の名がついたサンピエトロ大聖堂です。)の弟です。
 ナザレ近郊のガリラヤ湖で兄と魚をしていたときにキリストに声をかけられました。磔刑の十字架がX字形なのは、キリリストと同型なのを避けたためとか。

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ウイーダ『フランダースの犬』(ポプラ社) ~どう言う話だったかなと、気になって、「ルーベンス展」に行く前に、児童書を再読しました。

 上野の国立西洋美術館で開催されている、『ルーベンス展』に行く前に、気になっていた、児童書を図書館の児童書コーナーで借りて来て読みました。
 多分、子ども時代に読んだと思うのですが、筋を忘れてしまっていたからです。

ウイーダ(マリー・ルイーズ・ド・ラメー。英国)・高橋由美子・訳、
『フランダースの犬』(ポプラ社)

です。

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 美術展で、
 アントワープ聖母大聖堂(アントワープ市の守護聖人・聖母マリアを祀る、ネーデルランド最大の聖堂です。)の3枚の祭壇画、
《十字架昇架の三連祭壇画》(1610-1611頃)、《十字架降架の三連祭壇画》(1611-1614頃)【写真】、《聖母被昇天》(1626頃)
を、4K映像で公開されていると言うのです。

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 因みに、1626年夏に、ルーベンスの妻・イザベラが死んでいます。17年間の結婚生活でした。また、1623年には、娘・クララ・セレナが12歳で死んでいます。クララの肖像画(1618頃)も、ルーベンス展に出ています。

 特に、《十字架昇架》と《十字架降架》は、『フランダースの犬』で、少年ネロと愛犬パトラッシュが、その前で凍死する絵画です。

 『フランダースの犬』は、アントワープの街外れフランダースの村に暮らす、食物にも事欠く、アルデンヌ生まれの貧しいネロ少年と、荷車を引いて病に斃れ、残忍な飼い主に瀕死で捨てられたところをネロが助けた、フランダース生まれの犬パトロッシュの物語です。

 少年は、画家志望で、アントワープ大聖堂の《十字架降架》を見たいのですが、有料で、とてもかないません。

 ネロは、ネロを育てていた、80歳を越えるジェハン・ダースが死に、おまけに、盗みの濡れ衣を着せられて村八分になり、いよいよ困窮します。
 食べ物も無くなって、家賃も支払えずに家を追い出され、食の糧になろうという、教会の絵のコンクールに応募した結果を確かめに、街に出かけます。
 老いた男が、倒れた木に腰掛けている木炭の白黒の絵でした。
 しかし、優勝したのは、港の管理人の息子で、ネロは落選しました。

 クリスマスの夜中、真夜中のミサの後、開いていた扉から、教会に入ったネロは、愛犬パトラッシュをしっかり抱いて、ルーベンスの絵の下で、凍え死にます

 ネロ死後、高名な画家が、コンクールに応募したネロの絵を見て、賞を取るにふさわしかった少年を、弟子にしたいと探していたのですが、既に、手遅れでした。

 後悔した街の人は、硬く抱き合って引き離せないネロとパトラッシュの遺体を同じ墓穴に埋葬しました。
・・という物語です。

 悲しい物語で、欧米では、ハッピーエンドに改作しているようですが、我が国では、原作どおりです。

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映画『ミケランジェロ:愛と死 (アート・オン・スクリーン)』 ~壮大な、素晴らしい彫刻を、上下四方から接近して見られた、感動の時間でした。

 一昨日に続いて、ドキュメンタリー映画「アート・オン・スクリーン」の

『ミケランジェロ:愛と死』(90分)

を観てきました。
 「ルーベンス展」を観るためにも、ルーベンスに影響を与えたミケランジェロを早く見たかったのです。

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 10月の『フィンセント・ファン・ゴッホ:新たなる視点』、一昨日の『私は、クロード・モネ』に続いての鑑賞です。
 プロデューサーは、フィル・グラフスキー、
 監督は、デビッド・ビッカースタッフ
の2017年・英国映画です。

 映画は、
ミケランジェロ・ディ・ロドヴィーコ・ブォナローティ・シモーニ (1475-1564)
の創作を想像させるような、静かに大理石を削る場面から始まり、その人生と作品を紹介していきます。
 特に、例えば、日頃、教会の、暗い、高い位置に置かれている彫刻作品を、上からも、近くからも詳細に見られるのは映像ならです。

 その人生は、既に、生前に書かれた伝記、
ジョルジョ・ヴァザーリ『画家、彫刻家、建築家列伝』(1550)、
アスカニオ・コティヴィ『ミケランジェロ伝』
が多く引用されます。後者は、ミケランジェロの弟子で、伝記は詳細です。

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映画『私は、クロード・モネ (アート・オン・スクリーン)』 ~ピアノ伴奏と書簡文の朗読で絵画を綴っていく、静謐な90分でした。

 小春日和(ドイツでは、老婦人の夏、と言うそうですが)の中、シャツ1枚の軽装で、27日(火)15時から、映画を観てきました。
 ドキュメンタリー映画「アート・オン・スクリーン」

『私は、クロード・モネ』(90分)

です。

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 10月11日に、『フィンセント・ファン・ゴッホ:新たなる視点』を観ています。あと一本、『ミケランジェロ:愛と死』を観る予定です。
 プロデューサー:フィル・グラブスキーのドキュメンタリー映画ですが、なかなかの高水準です。

 オスカル=クロード・モネ(1840-1926)については、4月18日の本ブログで、
原田マハ『ジヴェルニーの食卓』(集英社)
が、11歳の少女時代から55歳まで、ずっとモネの力になったオシュデ・ブランシュの側面から描いているのを紹介しました。見事な着想です。

 今回の映画は、全編、モネの約2,500通の書翰を編集して・・、
少年時代のル・アーブルと風景画家・ブータンの出会いから始まって、カミユとの結婚、
アルジャントゥイウでの生活、デュラン・リュエルの支援、
パトロンのエルネスト・オシュデ一家との生活、カミュの死(1879)、
オシュデの妻・アリスとの交際・結婚(1892)、
ジュヴェルニーでの生活(1883-)、アリスの死(1911)、
そして、オランジェリー美術館への「睡蓮(すいれん)」の大作製作、死(86歳)までを、主要な絵画作品を紹介しつつ描いていきます。

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尾崎彰宏『レンブラント工房』 ~フェルメール、レンブラント、ルーベンスを繋ぐものを考える読書でした。当時の画家の世界を、数字資料等で、克明に分析した好著です。

 24日(土)は、孫たちが通っている、学習院の「初等科祭」、いわゆる文化祭に行って、2年生の孫の劇や作品、4年生の孫の作品を見て来ました。
 きまりではありませんが、いつも、ダークスーツにネクタイをして行きます。
 余談ですが、初等科のトイレ自体もすこぶる清潔で美しいのですが、驚いたのは、手洗いで、手を下にかざすとが出て来ます。聞くところによると、冬でもきちんと手を洗わせるのが目的だとか。

 劇と作品を見た後、帰りに、迎賓館、赤坂御所の脇を通って、明治神宮外苑の銀杏(いちょう)並木に足を伸ばしました。
 銀杏は、紅葉真っ盛りでしたが、連休中とあって、もの凄い〈人の絨毯〉。早々に、立ち去りました。(いつも、「休み」なので、「連休」ということを失念していました。)

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 さて、このところ美術作品の読書が多くなっていますが(読む方が面白くて、ブログ・アップが少し疎かになり恐縮です。)、今日、読み終えたのも、先日、ムンクの書籍と一緒に古書店で買った書籍で、

尾崎彰宏『レンブラント工房』(講談社選書メチエ)

です。

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 ネーデルランドのフェルメール(1632-1675)
 ネーデルランドのレンブラント(1606-1669)
 フランドルのルーベンス(1577-1640)
といった、ほぼ同地域の同時代の画家について比較してみたかったからです。
 ちょうど、上野でルーベンス展も開催していますので、その「予習」の意味もあります。(そのルーベンスについては、なお別に、2冊を読んでいる最中で、後にお話しできるでしょう。)

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「フェルメール展」 ~ マルセル・プルーストを3枚で感動させたフェルメール作品を8枚も観て、まるで〈失われた時〉を、観ることが出来た様です。

 まずは、このブログのアクセス数が、17万を超えたことにお礼申し上げます。

 さて、11月19日(月)16時(予約入場時間は、15時~16時30分)から、上野の森美術館で、

「フェルメール展」

を観てきました。
 規模の小さい美術館なので、定員〈予約制〉は、知恵を出しましたが、それでもギリギリ崖っぷちの感じは否めません。

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 オランダ、デルフトの、
ヨハネス・フェルメール(1632-1675)
の絵は、35枚(37枚とも)残るだけと言われていますが、今回は、8点が観られる貴重な展覧会です。企画キュレーターの苦労話を聞いてみたいものです。
 「真珠の首飾りの女」というので、あの、デン・ハーグの「真珠の耳飾りの少女」と早とちりして楽しみにしていたら、ベルリンの「真珠の首飾り」でした。そこは残念でしたが、1作品づつゆっくり、3廻りして鑑賞しました。

 ところで、この日のために、読んだ書物は、
・・芸術を求める主人公が、多くの経験や思索を経て、芸術の意味を発見し、作家になる決意をするという、マルセル・プルースト(1871-1922)の『失われた時を求めて』(ユダヤ人・シャルル・スワンは、フェルメールを研究している美術蒐集家です。また、スワンと親交ある作家・ベルゴッドは、フェルメールの「デルフトの眺望」を見つつ死に至ります。)は、間に合いませんでしたが・・、
既にアップした、
小説、トレイシー・シュバリエ『真珠の耳飾りの少女』(白水社)
のほか、
アンソニーベイリー『フェルメール デルフトの眺望』(白水社)2002年刊行
千葉成夫『奇跡の器 デルフトのフェルメール』(五柳書院)1994年刊行
などです。

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 読書中のメモは、12頁になりました。
 読書で、まずは、フェルメールの暮らした、オランダ、ネーデルランド(低地地方)のデルフトの街を知りました。

 この展覧会に、私なら、デルフトの街のジオラマを作って展示しますが・・、
 南北約1㎞(徒歩で15分ほど)の、人口・約2万5千の街で、フェルメールが生まれる60年前は、3人に1人がビール職人で、300もの醸造所のある街でした。

 ビール醸造所は、やがて、陶器製造所となり、1670年頃には、28社、約500人が働いていました。ここで、青一色の彩色タイルである〈デルフト焼き〉が作られ、フェルメールもその製法を組合で聞いたのでしょう。

 フェルメールの父母が住んだ家畜広場(ベーステ・マルクト)の「三本槌」の家、
フォルデルスフラハト23番地の生家「空飛ぶ狐亭」(宿屋・居酒屋)や、
8歳から住んだマルクト広場の「メーヘレン亭」、
そして、すぐ近く、歩いて2分ほどに、結婚して(1653年)住んだアウデ・ランゲンディクの坊主横町があります。
 〈坊主横町〉とは、イエズス会教徒の所有する建物が周囲にあったからです。

 デルフトを知ることは、聖ルカ組合の友人たち、
ハブリエル・メツー(1629-1667)
ピーテル・デ・ホーホ(1629-1684)
ヘラルト・ダウ(1613-1675)
ヤン・ステーン(1626-1679)
らを知ることです。相互に、絵を語り合ったようです。

 この展覧会では、特に、
ホーホの「人の居る裏庭」
ダウレンブラントの実母がモデルと言われている「本を読む老女」
を観られて良かった。

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国立劇場・歌舞伎『名高大岡越前裁』 ~稀代の悪計に追い詰められる大岡忠相。ハラハラ、儲け役の池田大輔。珍しい、一度も大向こうから掛声がかかりません。さて、今日から、観劇後の食事は「帝国ホテル」のバイキングにしましたが、その感想も一筆書きます。

 昨夜来、やっと、少しだけ、冬らしくなって来ました。
 11月14日(水)11時から、永田町・国立劇場で、妻と、
 河竹黙阿弥(古河黙阿弥。文化13(1816)ー明治26)作、

歌舞伎『通し狂言 名高大岡越前裁 (6幕9場)』

(なもたかし おおおかさばき)を鑑賞しました。終演が、15時10分と、早いし、休憩がいやに多くて、細切れ感があります。

 本題名は、「扇音々(おうぎびょうし)大岡政談」で、初代神田伯山の講釈を元に書かれ、明治8(1875)年、新富座で初演されました。明治150年記念となり、かなり補綴されました。

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 余談ですが、歌舞伎専用劇場公演で、珍しかったのは、「~屋 ! 」と言った大向こうからの掛声が、あれは歌舞伎の華ですが、一度も聞こえなかったことです。
 大向こうさんのストライキみたいな感じ。
 映像でも撮影していて遠慮したのかな、それなら、余計に本末転倒です。
 それで、5幕が終わった時に、劇場スタッフに、「この芝居は、声をかけては駄目なんですか」と、皮肉では無くて尋ねたくらいです。「いや、みえてますけれど・・」との答え。

 今回は、舞台の仕掛けも無く、多少の山はあっても、基本的には平板で、淡々と理屈と会話ばかりが続きます。筋の為の芝居のようで、ご贔屓さん見物よりも、戯曲を楽むのを主眼としている私でさえ、芝居としては、やや面白くなかったのは、台本改変・補綴が巧くなかったのでしょうか。
 それに、そもそも、今時、「大岡・・」と言うのも、余程の新演出でなければ、最初から、ちょっと見に行くのを、心配はしていたんですが・・。そう言えば、来月の出し物も、「石川五右衛門・・」。どうしちゃったの、国立劇場。

 ・・・と、その前に、もう一つ、今回から、終演後のディナー・バイキングを帝国ホテルの「サール」にしましたが(写真は、入口です。)、先にそのお話を・・。

 ネットでは、「サール」は、100%ベタ褒めされていて、もの凄い評判です。
ドレス・コードは・・、などと気合いが入ったブログもあります。

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 しかし、私の感想は、一流ホテルでは、あれくらい「普通」で、どうして、ネットで、あんなに褒められているのか理解できません。(歌舞伎が面白くなかったので、八つ当たりしているのではありません。)

 ま、私は、帝国ホテル・桜の間での息子の結婚式の時に、最後の挨拶が心配で、ろくにお代わり出来なかったロースト・ビーフを、今回、3回お代わりして堪能し、また、アップル・パイは見事でしたが、・・それくらい。
 帰宅後、これから「サール」にするつもりで、既に、12月も予約してありましたが、コスパが良くないので、キャンセルしました。

 さて、本題に戻って、歌舞伎の話です。

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プロフィール

感動人

Author:感動人
 芸術全般を愛する団塊世代です。
 芸術団体を「引退後」、たっぷり時間をかけて、いろいろな芸術を初心にかえって学び、横断的に、楽しんでいきたいと思います。もうひとつ、心身共に健康に「年をとっていく」ための、生活のマネジメントも「同時進行」でお伝えします。
 のんびりと過ごしたいと考えています。お寄せいただくコメントなども、論争などは避けて、ゆったりしたお話をお寄せください。

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